センサーカメラに映ったイノシシ

2014.01.31(Fri)

イノシシは元来、県内に広く分布し、戦後しばらくまでは船橋や松戸あたりにも生息していたようです。1946年には県全体で90頭くらいが捕獲されています。しかし、その後減少に転じ、70年代に入る頃には、房総半島では非常にレアな生き物になっていました。72年を最後に捕獲も途絶えます。これは狩猟圧に加え、豚コレラの蔓延が大きな原因とされています。78年の「第2回自然環境保全基礎調査」においては、清澄山系を中心に10頭くらいの生息が推定されました。ほぼ、絶滅したかしないかの狭間のような扱いです。

ところが、86年に君津で1頭が捕獲され、平成に入るとイノシシは南房総を中心に加速度的に増加し始めます。狩猟目的で県外のイノシシを持ってきて放獣を行った人間がいたためです。その一部はイノブタであったともいいます。在来の個体群が絶滅もしくはそれに近い状態となって生態学的地位がぽっかり空いていたことに加え、第一次産業の衰退による耕作放棄地の増加、中山間地の荒廃がそれに拍車をかけました。平成23年度には県内で13000頭を超えるイノシシが捕獲されています。個体数は当然のことながらそれをはるかに上回る数なわけで、「10頭いるかいないか」だったものが、30年間でそんなになっちゃったわけです。やはり平成23年度、県内のイノシシによる農業被害は2億円以上にのぼっています。分布域もぐんぐん拡大しており、千葉市内でも既に目撃情報があり、また私自身、個人的にハンターの方から「もう千葉市にもいる」とはっきり聞いています。

そんなにたくさんいて、しかも農業に被害をもたらすならどんどん捕まえて食べちゃえばいいというのは誰しも思うところ。実際にそのような動きは各地域で起こっているのですが、そこにいっとき冷水を浴びせたのが東京電力福島第一原発の事故でした。千葉県が分析した検体のうちから100ベクレル/kgの基準値を超える放射性物質が検出されたため、県は出荷自粛を県内全施設に要請し、かつ2012年11月5日付けで、国の原子力災害対策本部長より、県内で捕獲されたイノシシの肉について出荷制限が指示されたのです。土と一緒に様々な土壌の生物を食べるイノシシは、放射性セシウムの影響を受けやすいのです。

この出荷制限は、2013年7月19日までに県内すべての処理加工施設において解除されています。ちなみに現在、県内の処理加工施設で加工されているイノシシ肉の放射性物質の検査結果については、全頭検査結果をこちらで確認することができます。昨年末には、捕獲したイノシシ肉の販売促進のため、市原市と大多喜町が協定を結びました。

こちらの動画は、私が生物調査を請け負わせて頂いている袖ヶ浦市の谷津田で、現地スタッフの方が設置したセンサーカメラに撮影されたイノシシのファミリーです。



この谷津田では、いくつかの定点で、イノシシが夜間非常にしばしばカメラに映っています。足跡はいつも縦横無尽に残っているし、餌を求めて鼻で掘るため水路や畔など地形もしょっちゅう改変されています。トウキョウサンショウウオなど、希少な生物に対する食害も無視できないものがあります。これから時間をかけて、どれほどの個体群がどのようにここで活動しているのか記録していきたいと思っています。
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Category: 哺乳類

18:00 | Comment(3) | Trackback(-) | EDIT

婚姻色のカワウの羽干し

2014.01.22(Wed)

池のほとりの割石の上で、カワウが一羽、羽を拡げていました。


(20140121 千葉市若葉区)

これまでも何度かこのブログで紹介してきた通り、これは水鳥なのに「尾脂腺」が発達していないカワウが、濡れた羽を乾かすための「羽干し」です。

脚の付け根や顔が白くなっているのは、これまた何度か紹介した「婚姻色」です。拡げた羽を小刻みにパタパタ震わせるところはまるで布団干し。あらためて正面から見ると非常にユーモラスな仕草です。動画を撮りながら、一度たたんだ羽をまた拡げたところで笑い出しそうになってしまいました。

※カワウ
千葉県レッドリスト・D(一般保護生物)


▽カワウに関する過去の記事

婚姻色のカワウ 2013.2.11

婚姻色のカワウ 2011.12.19

羽を乾かすカワウ 2011.12.7

カワウの婚姻色 2011.1.29

カワウ@泉自然公園 2009.6.8

カワウ@坂月川 2009.4.14

カワウ 2009.2.12

Category: 鳥類

22:10 | Comment(0) | Trackback(-) | EDIT

ヨシガモの水面採餌

2014.01.21(Tue)

ユーラシア大陸東部から、ヨシガモが渡ってきています。カモ類の常で、雌がこのように地味な一方、

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(20140121 千葉市緑区)

雄はたいへんあでやかな姿です。

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(20140121 千葉市緑区)

主に植物食で。ここでは水面をぐるぐると泳ぎ回りながら、藻を食べていました。

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(20140121 千葉市緑区)

時折、ぐるんと半潜水のような動作をします。こうやって後ろから見るとなんだかわかりませんが、

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(20140121 千葉市緑区)

前から見ると、羽の模様が綺麗な青海波。

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(20140121 千葉市緑区)

日中はだいたいこうして水面で過ごします。暗くなると湿地や水田に出かけ、植物の種子なども採食します。

※ヨシガモ
千葉県レッドリスト・B(重要保護生物)
千葉市レッドリスト・B(重要保護生物)


▽ヨシガモに関する過去の記事

ヨシガモ 2013.1.6

Category: 鳥類

23:13 | Comment(0) | Trackback(-) | EDIT

ワカケホンセイインコ

2014.01.17(Fri)

市内の公園で、ワカケホンセイインコに出会いました。

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(20140117 千葉市中央区)

インコといっても、セキセイインコよりも倍以上も大きく、尾羽も長いのでそうとうなサイズ感があります。全長は40cmほどに達しますから、オナガなんかと同じか、むしろ大きいくらいです。元来はインド南部、スリランカあたりが原産の鳥です。日本では1970年代から都内で野生化し、何とかして冬越しをし、繁殖しているようで、千葉市内でも何ヶ所かで見かけます。この写真を撮っている時にたまたま通りすがりのおばさんに聞いた話では、「あの鳥は近所の〇〇神社の森に棲んでいる」「桜の季節になると大挙して現れる」のだそうです。

少し離れた木にもう一羽いました。

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(20140117 千葉市若葉区)

独特のよく通る声でしきりに鳴き交わしていました。実に鮮やかな黄緑色の体が、冬枯れの木と青空との対比で非常に目立ちます。ケヤキなどの高木の樹洞に営巣することが多く、花の蜜を好む鳥なので、その生態は先ほどのおばさんの証言とぴたりと一致します。

Category: 鳥類

22:14 | Comment(0) | Trackback(-) | EDIT

一本足のキジバト

2014.01.16(Thu)

公園で採餌しているキジバト。何の変哲もない光景ですが、ふと何かがおかしいことに気づきました。よく見るとこのキジバト、片足がありません。


(20140116 千葉市中央区)

残った一本の足で跳ねながら移動し、地面のドングリをつついています。鳥は飛ぶから足はなくても大丈夫だろう、というわけにはいきません。キジバトは空中で採餌する鳥ではありませんし、木の上でも地上でも、両足ですることを片足でしなければならないのは大きなハンディキャップです。足をなくした原因は何でしょう。猫でしょうか。それともワイヤーか何かに絡んだためでしょうか。この公園にはたくさんの猫がいます。この先身を守り、命をつないでいくのには大変な苦労がいることでしょう・・・

▽キジバトに関する過去の記事

キジバトの地上採餌 2011.1.30

庭のキジバト 2010.1.26

キジバトの食事 2009.12.18

キジバト 2009.2.21

キジバト 2008.3.5

Category: 鳥類

22:19 | Comment(0) | Trackback(-) | EDIT

ニホンリス

2014.01.14(Tue)

近くの藪の中でイノシシの気配(音&声)がしたものですから、姿が見えたら撮影しようと思い、谷津の奥の森の中で5分ばかりじいっとしゃがんでおりました。しかしイノシシはそのままどっかに行ってしまったらしく気配は消えてしまい、あきらめて立ち上がろうとすると斜め後ろの樹上で何やら動くものが。そろそろ~っと振り返ります。

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(20140114 袖ヶ浦市)

冬毛になると見られる耳の先の房毛が、まぎれもなくニホンリスであることを示しています。ニホンリスは頭胴長20cm、体重300gもあればかなり大きい方という小柄な動物なのですが、ふさふさした長い尻尾とダイナミックな動きのため、自然環境下で見るともっと大きく見えます。私の少年時代には千葉市郊外でもわりと簡単に出会うことができる動物でしたが、今ではマツ林の衰退その他の要因ですっかり数を減らしてしまっています。

ここの谷津田ではかねてからマツの食痕を拾ったりしており、いるのはわかっていたものの、実物にお目にかかるのは初めてです。この後、リスは樹冠近くを縦横に走り回り、斜面林の中に消えていきました。

※ニホンリス
千葉県レッドリスト・C(要保護生物)
千葉市レッドリスト・A(最重要保護生物)


▽ニホンリスに関する過去の記事

ニホンリスの食痕 2013.8.10

Category: 哺乳類

22:16 | Comment(0) | Trackback(-) | EDIT

ヨコヅナサシガメ幼虫の集団越冬

2014.01.13(Mon)

この時節にですね、公園などでこのような樹洞をのぞき込むのは、近頃ちょっぴりコワいのです。

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(20140113 千葉市中央区)

なんでかって?んじゃあ少し近づいてみましょう。

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(20140113 千葉市中央区)

わかんない?ではさらに寄って、ついでにストロボを焚いてみましょう。

ほら。

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(20140113 千葉市中央区)

ほら、ね。

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(20140113 千葉市中央区)

大陸原産の外来サシガメ、ヨコヅナサシガメが関東地方に進出してきたのは90年代のことです。21世紀に入ってしばらくすると房総半島でも見られるようになりました。そして2014年冬、みなさま機会があったら千葉市街の近くでもなんでも、街路樹のくぼみや樹洞をのぞき込んでみてください。とりわけサクラの木がいいと思います。そんなに苦労しないでこういう光景を見つけることができます。

ヨコヅナサシガメはおおよそ梅雨の季節に産卵します。夏に孵化し、幼虫は脱皮を繰り返して成長しながら冬を迎え、時には数百匹単位の群を作って越冬、翌年春に羽化して成虫となるのです。成虫は秋には見られなくなることからすると、その寿命は1年間のようです。

まさかそんなことをする人も少ないとは思いますが、こんなふうに木にびっしりついているのを見つけても、慌てて手のひらで叩き落としたりはしないほうが良いです。サシガメは捕食のための鋭い口吻を持っており、突き刺されるとめちゃくちゃ痛い上、感染症を媒介する可能性もあるからです。

▽ヨコヅナサシガメに関する過去の記事

ヨコヅナサシガメ幼虫の集団越冬? 2009.11.28

ヨコヅナサシガメの幼虫 2009.11.22

ヨコヅナサシガメ 2008.5.27

Category: 昆虫類・カメムシ目

21:01 | Comment(2) | Trackback(-) | EDIT

ハマシギ

2014.01.05(Sun)

遅ればせながら、新年おめでとうございます。2014年最初に紹介する生き物は、ハマシギです。

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(20140105 習志野市)

ムクドリよりちょい小さいくらいの体格、そして冬羽の時のかっこうはイソシギによく似ていますが、ハマシギは脚が黒いので見分けがつきます。嘴もまた黒く、わずかに下方に湾曲しています。これでゴカイや貝類などを引っ張り出して捕食するわけです。たまにえらく長いゴカイを引っ張って、なかなか全部出てこずにもてあましたりしている時もあります。

房総半島では冬鳥です。このような湾岸の干潟では、かつては非常に多数が越冬していましたが、近年では各地で著しい減少傾向にあり、千葉県のレッドデータブックには「B(重要保護生物)」として、千葉市のレッドデータブックには「A(最重要保護生物)」として、それぞれ記載されています。

※ハマシギ
千葉県レッドリスト・B(重要保護生物)
千葉市レッドリスト・A(最重要保護生物)


Category: 鳥類

22:18 | Comment(0) | Trackback(-) | EDIT

プロフィール

大島健夫

Author:大島健夫
1974年11月20日生まれ。千葉生まれ千葉育ち。美浜区在住。

記述の中に間違いや誤解を見つけた方、またそれ以外にも何かございましたら、どうか
inaka_jikan@yahoo.co.jp
まで送っていただけると幸いです。

大島健夫公式サイト

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