上野は不忍池をのぞいておりましたところ、観光客の人たちが投げ込むパン屑などに群がるコイに混じって、なんか変なのが浮かび上がってきました。
(20140915 東京都台東区)
おお、ナマズです。
(20140915 東京都台東区)
真上から見るとオタマジャクシを拡大してひげを生やしたようなスタイルですね。この個体は体長40cmほどでしょうか。最大のものは例外的に1mに達することもあるようで、一昨年、岐阜県で巨大なのが見つかったというニュースが新聞やネットをにぎわしました。ちなみに琵琶湖とその流出水系にだけ生息するビワコオオナマズはさらに巨大で1.2mを越えるものもいるらしく、また世界は広いものでヨーロッパオオナマズには3mという記録もあり、伝説に近いレベルだと5mなどという途方もないやつが昔いたという話もあります。
それはともかく、ナマズはたいへん有名な淡水魚であるにもかかわらず、自然状態でその姿を見たことのある方はわりあいに少ないのではないでしょうか。ふだんは川の中・下流域や池沼の底の方にひそんでおり、夜になると出かけていって餌をあさるという暮らしをしています。大食漢で、カエルや魚、エビやカニなどの甲殻類等を積極的に捕食するのですが、こうした公園の池などに住んでいるやつは昼間から出てきてパンをもらったりもするというわけです。
(20140915 東京都台東区)
よく見るとじつにかわいい顔をしています。丸い小さな目と目が左右にうんと離れているところなんざ、たまらないものがあります。
初夏から梅雨に繁殖シーズンを迎えるナマズは、かつて川から水路や田んぼに上がっていき、そこで産卵をするという形で、この国の稲作農業と深く関わって生息していました。しかし、乾田化、圃場整備により川と田んぼが行き来できなくなった現在、彼らの個体数は各地で減少傾向にあります。この点では、メダカやフナ、トウキョウダルマガエルなどの減少とその根底を一にしています。「サケが遡上する川を!」「ホタルが帰ってくる水辺を!」などといったキャッチフレーズはあちこちで実にしばしば叫ばれますが、「ナマズが上がってくる田んぼを!」という声はあんまりたくさん聞こえてきません。前述のように捕食者として、昔ながらの米作りを取りまく生態系ピラミッドの頂点付近に位置するナマズが生きられる環境を保全することを目指すことは、それに付随して実にたくさんの動植物と人の営みの文化に同時に関わることとなり、多様性の復活を顕著にもたらす可能性があると私は思うのですが。
※ナマズ
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