メダカ

2011.10.27(Thu)

メダカを知らない日本人はおそらく珍しいと思うのですが、メダカを野外で見たことのない日本人は昨今、もしかするとたいへん多いのではないでしょうか。しばしば取り沙汰される通り、生息環境が非常に悪化しているからです。


DAYLIGHT RAMBLER  DAYLIGHT RAMBLER  

(20111027 千葉市若葉区)


メダカといえば代表的な田んぼの魚で、田んぼやその周りの水路で見られる、というのが一般的なイメージでしょう。ところが、現在の田んぼは圃場整備によって河川と分断されており、しかも乾田であるため冬季には水を抜いてしまいます。これではメダカが住めようはずもありません。私は現在、千葉市内の鹿島川水系の田んぼの周辺でメダカの生息状況を調べているところですが、わずかに残った湿田環境以外では、冬でも水のある水路やそれに付属するマスなどに、点々と局所的に生息しているという実態です。この写真のメダカもそのような場所で撮影しました(言うまでもありませんが記録後は元いた場所に戻しています)。


そのメダカによく似ていて、現在ではメダカよりも広範囲で見られるためにしばしば間違われるのが外来魚のカダヤシ です。しばしば同じところに混生している上、大きさも形もそっくりなのだけど、メダカはダツ目、カダヤシはカダヤシ目で類縁関係はなく、「他人の空似」に近いものです。この両者を簡単に見分けるには横からのぞくことで、


これがカダヤシ(雌)。


DAYLIGHT RAMBLER  

(20111027 千葉市若葉区)


これがメダカ。


DAYLIGHT RAMBLER  

(20111027 千葉市若葉区)


メダカのほうが尻ビレの基部が長いのです。また、上から見たときにはメダカのほうが頭部から背中にかけての黒い線が目立ちます。


メダカの減少についてはマスコミ等で取り上げられる機会も多く、地域の人等による「放流」もしばしば行われます。しかし、これには極めて慎重な態度で臨まなければなりません。メダカは地域集団による遺伝的差異が大きく、しかもその研究はまだ途上にあるのです。つまり、よその地域のメダカを安易に移入することは遺伝子汚染をもたらすのみならず、メダカという魚が日本列島の自然史の中でどのようにして移動し、どのように生きてきたか、という検証を不可能にしてしまうのです。それは一度やってしまったら取り返しのつかないことです。百歩譲って、野外への放流の前後の生態系の調査と、その後の管理を徹底的に行うのなら時と場合によっては検討の対象にならないこともないでしょう。しかし、はなはだ残念ながら、私はメダカを放流した団体や個人がそのようなことを行った例を、寡聞にして知りません。


これは、放流を行う個人や団体だけが悪いのではありません。外来種の問題もそうですが、本当に悪いのは、この国の人たちが生態系のシステムに対する考え方を教わる機会があまりにも少ないことだと私は思うのです。だからこそ、人々の様々な善意が実際には自然を破壊するという悲しい例が起きてしまうのです。


今そこにいる生き物はどこから来て、どのような形で他の生き物や周囲の環境と関係しながらそこで暮らしているのか。それを考えた時、人は自分の存在もどこかでその営みの中に結びついていることを知ることができます。皆がそれを当然の前提条件として、それぞれの立場から自然に関する議論を始めることができたなら、それはどんなにか実りのある議論になることでしょう。


※メダカ

環境省レッドリスト・VU(絶滅危惧Ⅱ類)

千葉県レッドリスト・B(重要保護生物)

千葉市レッドリスト・A(最重要保護生物)



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Category: 魚類

19:36 | Comment(2) | Trackback(-) | EDIT

COMMENT

ミント #79D/WHSg

1. 無題


takさんのメダカの記事、(他の記事もですが)とっても勉強になります。    私は
以前、野生のメダカが飼いたくて、近所の池とかにメダカを探しにウロウロ行ってた事がありますが、ほとんどがカダヤシでした。

でも8年程前、いつも散歩に行く河川敷の向こう側の田んぼの用水路で、メダカ(多分黒メダカ)を見つけ数匹持って帰り、それを繁殖させて今も飼っています。
メダカも地域によって遺伝子が違うのですね。

もう捕まえて飼ってしまったので、むやみに逃がさず、家で飼っておこうと思いました。
変な文ですみません。

2011.10.28(Fri) 10:26 | URL | EDIT

tak #79D/WHSg

2. Re:無題


>ミントさん
ありがとうございます。

私が調べて歩いている範囲でも、目につくのは多くがカダヤシです。メダカは本当に減ってしまいました。

8年間、繁殖させて飼い続けてこられたのですね。どこの水系で捕獲したものかがはっきりしているのは貴重だと思います。元の生息環境の個体群が絶滅したりしてしまった時には大きな意味を持つようになるかもしれません。是非、大切になさってください。

2011.10.28(Fri) 19:37 | URL | EDIT

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プロフィール

大島健夫

Author:大島健夫
1974年11月20日生まれ。千葉生まれ千葉育ち。美浜区在住。

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