スナヤツメ

2011.10.28(Fri)

この日は鹿島川系の水路や湧水をいくつか調べて回っておりました。夕方近くなってそろそろ切り上げようかと思い、「でも最後ここだけ」と思って目の前の水路に降りて二、三歩歩き出すと、目の前の砂の中からスナヤツメが顔を出しました。


DAYLIGHT RAMBLER  DAYLIGHT RAMBLER  

(20111027 千葉市若葉区)


本当にウナギみたいな形状をしていますが、類縁関係はありません。スナヤツメのようなヤツメウナギ科は、魚類の、というよりも脊椎動物そのものの先祖に近い原始的な仲間で、骨格も簡素で口には顎さえないのです。なぜ「八つ目」と呼ばれているかというと、鰓孔が七対あり、本物の眼と合わせて八つに見えるからです。


DAYLIGHT RAMBLER  

(20111927 千葉市若葉区)


しかし、その「本物の眼」があるのは実のところこうした成魚のみです。


このスナヤツメは、なんと「変態」を行うのです。まず孵化すると「アンモシーテス幼生」というものになります。このアンモシーテス幼生には眼がなく、ちょっとミミズのようなスタイルをしており、水質の良い流れの底の砂泥の中で有機物を食べて15から20cmほどにまで成長します。3年ほど経過した秋に変態して成魚になると、身体はむしろ小さくなり、13から15cmくらいに縮むのです。そして、変態後は一切の食物を摂らず、翌年の春が来ると交尾・産卵を行い、その一生を終えます。ですから、この写真の個体はちょうど変態を終えたばかりということになるのでしょう。その余命はあと半年です。


国内のスナヤツメは北方種と南方種に分かれているのですが、千葉県産の個体群については識別の研究がいまだなされておらず、どちらに属しているのかはまだ正確にはわかりません。カワヤツメと異なり、一生の間海に降りないその生態は、かつては湧水を源とする細流の多い房総半島の谷津田環境によく適応していました。かつては、と言わねばならないのは、健全な谷津田環境が、特に県北部からは加速度的に失われつつあるからです。谷津田環境の保全は、こと農業だけの問題ではありません。それが失われることは、そこに依存してきた、胸を張って世界に誇れる特異で豊かな生態系が消滅してしまうことをも意味しているのです。


※スナヤツメ

環境省レッドリスト・VU(絶滅危惧Ⅱ類)

千葉県レッドリスト・A(最重要保護生物)

千葉市レッドリスト・A(最重要保護生物)



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Category: 魚類

19:39 | Comment(4) | Trackback(-) | EDIT

COMMENT

うりゅう #79D/WHSg

1. 無題


昔はたくさんいたと聞きますが
今ではなかなか見なくなりました
幼生を飼った事がありますが
余りの成長の遅さに採った所に戻しました

早春に産卵の為に集まると聞きます
秋に変態して春に備えるんですね
天竜川でも産卵に集まったのが見られたそうです

2011.10.30(Sun) 01:01 | URL | EDIT

tak #79D/WHSg

2. Re:無題


>うりゅうさん
幼生、飼ってらしたことあるんですね!さすがです。

千葉でもスナヤツメはずいぶん少なくなっていますが、まだ局所的にかなりいる場所もあります。これを撮影した場所でも、春には集団での交尾・産卵が見られるそうです。撮れたらいいなあと思っています。

2011.10.30(Sun) 17:38 | URL | EDIT

スモール #79D/WHSg

3. すなやつめ


ヤツメはじめて見ました。
思いのほか身近な所にも生息していると聞いて、驚きました。
これまでは、図鑑と料理屋の看板(?)でしか知らずにいました。

谷津田の生態系、全くおっしゃる通りだと思います。漠然とですが、日本の宝、日本文化の源がそこにあるように思うのです。

メダカの記事でも思いましたが、谷津田の生態系、大事にしたいです。

2011.10.30(Sun) 19:20 | URL | EDIT

tak #79D/WHSg

4. Re:すなやつめ


>スモールさん
スナヤツメ、かつては千葉県全体に分布していたようです。もしかしたらスモールさんのお近くにもまだ残っているかもしれませんね。

谷津ってほんとに素晴らしいと思うんです。農業の競争力とか大規模集約とかが言われがちだけれど、生態系との関係についてももっともっと議論が深まって欲しいと思っています。

2011.10.30(Sun) 21:56 | URL | EDIT

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プロフィール

大島健夫

Author:大島健夫
1974年11月20日生まれ。千葉生まれ千葉育ち。美浜区在住。

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