ネムノキ

2013.07.16(Tue)

すっかり夏です。谷津田の林縁では、ネムノキがまるで花火のような花を咲かせています。

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(20130715 千葉市若葉区)

「ネムノキ」という名前は、夜になると葉が閉じ、「就眠運動」をすることに由来しています。昼間は葉を開いて光合成をし、夜になると光合成の必要がないので閉じちゃうというわけですが、どうしてそんなことができるのかは実のところよくわかっていないようです。ちなみに、就眠運動をさせないようにすると弱ってしまいます。ブラック企業には勤められない植物です。

この、夜になると葉が閉じている様子を男女が抱き合って寝ている様子になぞらえ、「合歓木」という字があてられ、夫婦円満の象徴とされています。万葉集には紀女郎の詠んだ、こんな歌が収録されています。

昼は咲き 夜は恋ひ寝ぬる合歓木花 我のみ見めや 戯奴さへに見よ

乱暴に訳すと、昼の間は咲き、夜になると恋寝るネムの花を、私ひとりで見ているのもなんだからあなたも一緒に見なさいよ、と誘っている歌です。この場合の「戯奴」というのは身分の低い目下の人間に気安く呼びかける二人称で、紀女郎がこんな歌でつついている年下の男というのはのちに三十六歌仙のひとりに数えられるようになる大伴家持でした。家持は紀女郎より一回りかそれ以上、年下であったと考えられています。さらに紀女郎はこの時、このような歌も添えて送っています。

戯奴がため 我が手もすまに春の野に 抜ける茅花ぞ 食して肥えませ

あなたのためにせっせと茅の花(チガヤ。若い花は食べられる)をとってきてやったから、いっぱい食べて太れ、というのです。とりあえずごはんを食べさせたいようです。どこまで本気なのでしょうか。

そして、これらに対する大伴家持の返歌も、万葉集に収録されています。

我妹子が 形見の合歓木は花のみに 咲きてけだしく 実にならじかも

あなたがくれたネムノキは、花は咲くけど実にはならないでしょうよ、というのです。二人の年齢差を考えると相当きわどい冗談です。話せば長くなりますが、二人の関係は、紀女郎の夫が不倫スキャンダルを起こして離婚騒ぎとなったあたりから端を発している節があり、先に誘ったのはどうも家持であったようです。

家持は、茅の花の歌の方にはこんな返歌を送っています。

吾が君に 戯奴は恋ふらし給りたる 茅花を喫めどいや痩せにやす

とにかくあなたに恋をしてしまっていて、もらった茅花を食べてもどんどん痩せてしまう、というのです。当時の感覚だと親子ほど年の違うふたりは、押したり引いたりしながら、おかしいようなシビアなようなやりとりを繰り広げています。
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Category: 樹木

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Author:大島健夫
1974年11月20日生まれ。千葉生まれ千葉育ち。美浜区在住。

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