カミツキガメ

2015.05.30(Sat)

谷津の奥のため池のほとりでトウキョウダルマガエルの写真を撮っていたら、視界の隅に何やら、かなり大きな生き物がじっとしている時特有の違和感が。

20150530.jpg
(20150527 佐倉市)

・・・向こう側の岸にいたのは、カミツキガメでした。

この池は樹木に囲まれて薄暗く、このカメがいるあたりだけに日光が当たっています。カミツキガメは夜行性で、クサガメやアカミミガメほど大っぴらな日光浴はしませんけれど、やはり時々は日光浴をするのです。そーっと近づこうとしたら気づかれ、カメが潜ってしまったので、その場にじーっとしゃがんで再び出てくるのを待ちます。

30分後、水面に顔を出しました。

201505301.jpg
(20150527 佐倉市)

さらに10分後、また最初と同じところに這い上がってきました。

201505302.jpg
(20150527 佐倉市)

甲長は20cmほど。まだ若い個体のようです。最大では甲長50cmほどにまで成長しますが、40cmを越えている個体は多くありません。

首をもたげると、案外かわいい顔をしています。

201505303.jpg
(20150527 佐倉市)

カミツキガメというと、なんとなく南国のカメというイメージを持たれている方もいらっしゃるかもしれませんが、実際には北米大陸に広く分布しており、低温にも強い耐性を持っています。今年の春には新潟でも冬眠中らしき個体が見つかり、問題になりました。千葉県では既に印旛沼水系で定着・繁殖が確認されています。カミツキガメは一回の産卵数が通常20から30個、稀に100個を越えるという多さで、かつカメであるからして寿命が長く、50年生きるとも80年生きるとも言われています(ただし、性成熟には亜種により数年~十数年がかかります)。従って、天敵のいない環境下では、極めて強い繁殖力を発揮します

201505304.jpg
(20150527 佐倉市)

動画にも撮影しました。カメの日光浴は動きが少なく、静止画とあんまり変わらないのはご容赦。



日本にいるカミツキガメは、当然のことながら、もともと生息していたものではなく、60年代以降、ペットとして飼われていたものが遺棄され、それが野外で繁殖したものです(現在ではカミツキガメは特定外来生物に指定されており、許可なく飼育・移動などを行うことはできません)。その噛む力の強さなどからくる危険がクローズアップされることが多く、また漁網を破るなどの被害も出ているカミツキガメですが、在来生態系に対する脅威がもっとも問題視されるべきでしょう。カミツキガメは口に入るものは何でも食べる肉食寄りの雑食です。例えばこの池には、トウキョウダルマガエルを始めとする稀少な両生類、各種の淡水魚や甲殻類が生息しています。そこへ、先ほど述べたような繁殖力と寿命を持ち、天敵のいない生き物を放てばどうなるか、という話です。

201505305.jpg
(20150527 佐倉市)

私は、カミツキガメそのものには何の悪意も持っていません。悪いのは100パーセント、人間です。カミツキガメと並んで印旛沼水系で定着しているワニガメなど、原産国では地域によって絶滅の危機にされされています。それを「愛玩目的」で世界中に流通させ、飼いきれないから捨てるという行為が行われ、その結果として在来生態系に甚大な影響を与えているという、世の中にこれほど愚かしい話があるでしょうか。そもそも、カメは「愛玩目的」で気安く飼うことのできる生き物ではありません。飼い主が先に死ぬ場合が多くあるからです。最後まで面倒を見きれないものを飼うことは、やはりやってはいけないことです。

千葉県では、「千葉県におけるカミツキガメ防除実施計画」に基づき、

平成19年度はワナによる捕獲で247頭、緊急収容(市町村・警察等)75頭の計322頭、
平成20年度はワナによる捕獲で157頭、緊急収容(市町村・警察等)95頭の計252頭
平成21年度はワナによる捕獲で216頭、緊急収容(市町村・警察等)80頭の計296頭
平成22年度はワナによる捕獲で192頭、緊急収容(市町村・警察等)128頭の計320頭
平成23年度はワナによる捕獲で414頭、緊急収容(市町村・警察等)172頭の計586頭
平成24年度はワナによる捕獲で274頭、緊急収容(市町村・警察等)115頭の計389頭
平成25年度はワナによる捕獲で550頭、緊急収容(市町村・警察等)85頭の計635頭

(データは千葉県生物多様性センターのwebサイトより引用)

のカメを防除しています。それだけの人手とエネルギーをかけても、べつに誰にも何の得にもならないことは言うまでもありません。そういうことに従事する人々は、自治体の職員であり、警察官であり、市民ボランティアであったりします。彼らはその時間とエネルギーを、他のもっと生産的なことに使うこともできるのです。まるっきり利権にも儲けにもならないのです。

しかし、そこまでしても、カミツキガメはやはり、日本の野外環境下にいてはならない生き物なのです。「原産国ではない土地の自然環境下に人為的に持ち込まれ、その土地の在来生態系に被害を与えているから」です。それは情緒で語ることのできる問題ではなく、問題視されている他の外来生物も同じです。アメリカザリガニが、ウシガエルが、アライグマが、ミシシッピアカミミガメが、どれだけの在来種を地域的絶滅に追い込んできたことでしょう。毎日のようにあちこちの里山をうろうろしている私のような人間には、そのことが肌で感じるようにわかります。しかし、それらの外来生物たちを、「悪い生き物」として片づけるだけでは何も変わりません。それは、戦争に際して一人一人の兵士を悪者扱いするのと同じことです。本当に悪いのは、先にも書いたように、それらを野外にばらまくシステムを作ってしまった、そして野外にばらまくことを止めることができない人間そのものなのです。

※カミツキガメ
特定外来生物


関連記事
スポンサーサイト

Category: 爬虫類

12:43 | Comment(0) | Trackback(-) | EDIT

COMMENT

POST COMMENT


プロフィール

大島健夫

Author:大島健夫
1974年11月20日生まれ。千葉生まれ千葉育ち。美浜区在住。

記述の中に間違いや誤解を見つけた方、またそれ以外にも何かございましたら、どうか
inaka_jikan@yahoo.co.jp
まで送っていただけると幸いです。

大島健夫公式サイト

ツイッター

カレンダー

03 | 2017/04 | 05
- - - - - - 1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 - - - - - -

アクセスランキング

[ジャンルランキング]
学問・文化・芸術
405位
アクセスランキングを見る>>

[サブジャンルランキング]
自然科学
43位
アクセスランキングを見る>>

検索フォーム

ブロとも申請フォーム

QRコード

QR
↑