トウキョウダルマガエル

2009.06.19(Fri)

気がつけば、このブログを始めてから一年四ヶ月が経ちました。


その間、都川、鹿島川流域を中心に、限られた範囲ではありますが千葉のあちこちをうろうろし、様々な生き物に出会い、またそれ以上に、人との出会いにも恵まれたことには感謝の念でいっぱいです。その中で、私自身、ブログ開始当初よりは、ちょっぴりではありますがいろいろなことを知ることができ、また知るにつれて楽しさも増してきたように思います。とりわけ、あちこち歩き回るにつれ、あそこに行けばこういう生き物がいる、ここに行けばこんな生き物がいる、という地図が脳内で少しずつ出来上がっていくことは、気持ちがわくわくするような喜び以外の何ものでもありません。


ですが、同時にショックだったこともあります。それは、ごく近い昔、記憶の中にある私の少年時代には普通であった生き物が、今では全く姿を消していたり、ほとんど見られなくなっているという事例が多数、ほんとうに多数あったことです。


トウキョウダルマガエルは、ニホンアカガエル と同じく、千葉市のレッドリストでは(A・最重要保護生物)に指定されています。しかし、こと私の行動範囲内に関する限り、ニホンアカガエルが、例え全面的に圃場整備された田んぼであっても、場所によってはいまだかなりの高密度で生息しているのに対し、トウキョウダルマガエルはそれとは比べ物にならないほど個体数が少なく、多くの地域では田んぼ中を探しても影も形もなくなってしまっています。すなわち、ニホンアカガエルが「いるところにはまだいる」のに比べ、このトウキョウダルマガエルは「いるところ自体がもうあまりない」という状態に陥ってしまっているのです。



DAYLIGHT RAMBLER  DAYLIGHT RAMBLER  

(20090617 千葉市若葉区)


この写真を撮ったのは鹿島川流域の谷津田ですが、現状、近辺におけるその生息域はほとんど連続せず、すっかり分断されてポツンポツンと点在する形で、これはやはり危険なことに感じられます。


トウキョウダルマガエルは、かつてはトノサマガエルと一緒くたにされていて、今でも多くの人はこの写真を見ると「おっ、トノサマガエル」と思うことでしょう。私なども小さい頃はこれをトノサマガエルだと思っていました。実際には、関東平野に生息しているこういう姿のカエルは、局地的に人為移入された個体群を除き、全てトウキョウダルマガエルです。


一生水辺からあまり離れず、田んぼのそばで暮らすカエルです。その減少には様々な要因が挙げられています。開発が進んで田んぼが減ったからだとも言われます。ウシガエルとの競合が言われることもあります。ですが、明らかに、田んぼが残っていてかつウシガエルが生息していない地域でもトウキョウダルマガエルは減少しています。とすれば、大きな原因はむしろ田んぼとそれを取り巻く環境そのものの構造的な変化にこそ求められるでしょう。とりわけ、コンクリートによる水路の垂直護岸、あるいはU字溝化は無視できません。トウキョウダルマガエルは指に吸盤がなく、ジャンプ力も強くないため、一度そのような場所に転落すると這い上がることができないのです(事実、今でもトウキョウダルマガエルが生息している田んぼには、ほとんどの場合、素掘りの土水路が残されている)。また、水質汚染、農薬の問題や中干しによるオタマジャクシへの影響もあります。


これは千葉だけの問題ではなく、トノサマガエル、ダルマガエルともに全国的に激減しているようです。


ある程度以上の世代の方にとっては、田んぼのカエルと言えばこのようなカエルであったのではないでしょうか。「鳥獣戯画」に出てくるカエルは明らかにトノサマガエルですし、河鍋暁斎の一連の作品にもトノサマガエルとおぼしきカエルが描かれています。松尾芭蕉の俳句で古池に飛び込んでいるのは、芭蕉が住んでいたのが深川だったことを考えると多分トウキョウダルマガエルでしょう。そのような、この国の文化芸術の中にさえ深く根を下ろしてきたカエルが今では滅びの道をたどっているとしたら、それは何かおかしなこと、皆で何らかの対策を考えるべきことだとは言えないでしょうか。

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Category: 両生類

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大島健夫

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1974年11月20日生まれ。千葉生まれ千葉育ち。美浜区在住。

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