ニホンマムシ

2009.09.29(Tue)

ハブを別にすれば、マムシは日本でもっとも有名な毒蛇であることは疑いのないところでしょう。しかし、野外でその動く姿を実際に見たことのある人は、もしかしたらそれほどたくさんはいないのではないでしょうか。何しろこれだけうろうろ歩いている私でも、生きたマムシとはそんなにしょっちゅう出会えるというわけではないのですから。



DAYLIGHT RAMBLER  DAYLIGHT RAMBLER  

(20090924 千葉市若葉区)


基本的にマムシは夜行性で、日中に出会うときにはこのように、湿気の多い道の端などにとぐろを巻いていることが多いです。誤解されがちですけれど、マムシは穏やかな性格の、動きの鈍い非力でおとなしいヘビです。こちらからいじめない限り、そうそう咬みつくものではありません。まずいのは、歩いていてうっかり踏みつけてしまったり、何も知らない子供が手にとろうとしたりするような場合です。一、二メートル以上も離れていればまず安全です。じーっと見ていれば、マムシの方が自分から引き下がっていきます。その際、尻尾を震わせて威嚇の動作をすることもありますが、だから飛びかかってくる、という性質のものではありません。通常、人間がマムシを怖がるよりずっと、マムシの方も人間が怖いのです。毒は出血毒で、咬傷を受けた場合の死亡率は1%程度であるということです。万が一の時には慌てず安静にし、すみやかに医療機関へ。



DAYLIGHT RAMBLER  DAYLIGHT RAMBLER  

(20090922 千葉市若葉区)


薄暗い茂みの中に入ると、その姿は目立ちません。体長は40~60cm程度と小柄で、全体に太短い印象です。現在、マムシは減少の一途を辿っています。これは、マムシが捕食者として生息できるような、生物多様性のある健全な自然環境、というよりも里山環境、農村環境が崩壊しつつあることのひとつの証明ではないでしょうか。逆に言えば、今もなおマムシが棲める場所は、間違いなく豊かな場所なのです。


機械に頼らない農業が主流であった時代、マムシは確かに危険なものであったに違いありません。しかし同時に、ネズミを多く捕食することから農業に有益なものともみなされ、あるいは水神信仰と結びついて弁天のお使いとみなされたりしてきた歴史もあります。そしてなんと言ってもマムシは貴重な蛋白源でもありました。私が幼稚園に通っていた頃、兄が入院したため母が病院に詰めることになり、代りに母方の祖母がやってきました。働き者の祖母は私たちの食事の世話だけでなく庭掃除までやっていき、その際にマムシを一匹見つけてやすやすと捕まえ、「じいさんにお土産にする」といって持ち帰っていきました。お土産といっても祖父と二人で眺めて楽しむというわけではもちろんありません。調理して食べるためです。私は残念ながら一度もマムシを食べたことはないのですが、食べた人はみな旨いと言いますから、本当に旨いのでしょう。テレビのようなメディアが平面的でセンセーショナルなシーンだけを垂れ流すようになる前、人々は時には危険な動物とも、地に足の着いた実際的で複合的な関り方をしていたのです。


先に書いた、「じっと見ていれば、マムシの方から引き下がっていく」というのは、祖母が母に教えたことです。母が私に教え、それを実践してきた母も私も、今まで一度たりとも咬まれたことはありません。

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Category: 爬虫類

11:38 | Comment(10) | Trackback(-) | EDIT

COMMENT

みっち #79D/WHSg

1. 実は私・・・


まだ生きてるマムシにお会いしたことないんです^^;;
これだけウロチョロしてるのに不思議ですよね。
息子は何度も見てるらしいんですけど。
色々と対処法は教えてもらってるんですが、会わないにこしたことはないですよね。

マムシドリンクは飲んだことがありますが、辛くて美味しくなかった記憶があります。勿論辛いのはマムシのせではありませんが。。。
おこじょさんは食べたことがありますよ( ´艸`)

2009.09.29(Tue) 14:11 | URL | EDIT

スモール #79D/WHSg

2. 親近感


マムシのこと、いろいろと教えてくれてありがとうございます。マムシに親近感が沸きました。マムシが多いと言われる谷津田があって薄気味悪く思ってました。マムシが多いのは豊かな証ですね。

2009.09.29(Tue) 17:56 | URL | EDIT

花立毛鈎工房 #79D/WHSg

3. 無題


初めてコメントします。
ヘビが苦手で、これまで直視できずにいたので、どれがマムシか分からずにいました。前回、岐阜と福井の県境の川への釣行で初めてじっくり観察し、「これがマムシかぁ」と実感しました。
見ていないというは恐ろしいことで、今までも何回もマムシに出会っていたことが分かりました。
生態についてもしっかり学ばせていただきました。ありがとうございます。

2009.09.29(Tue) 19:05 | URL | EDIT

おこじょ #79D/WHSg

4. タンパク源・・・


そんなにじっくり観察させてくれたなんてうらやましいですなぁ≧(´▽`)≦

せっかくだから食べてみたらよかったのでは?ww

2009.09.29(Tue) 19:48 | URL | EDIT

青菊 #79D/WHSg

5. ナマのマムシ


私も生でマムシを見たことがないです。
それほど怖い生き物でもないんですね。
対処のしようもきちんとあって。
そういう知恵が失われていくのが残念です。

共存共栄の道が消えていくような気がします。

2009.09.29(Tue) 23:46 | URL | EDIT

tak #79D/WHSg

6. Re:実は私・・・


>みっちさん
みっちさんが出会ったことないということは、生き物が好きだったり野外を歩いたりしない多くの人は会ったことがないのかもしれませんよね。千葉県・千葉市ともレッドリストのBにランクされてますし、個体数も決して多くないのかもしれないです。

私はマムシ酒なら頂いたことがあります(´∀`)

2009.09.30(Wed) 17:15 | URL | EDIT

tak #79D/WHSg

7. Re:親近感


>スモールさん
お役に立てて嬉しいです。
湧水の多い、特に基盤整備してない谷津田などにはマムシも多いですね。きっと他の生き物も多い場所だと思います。

2009.09.30(Wed) 17:17 | URL | EDIT

tak #79D/WHSg

8. Re:無題


>花立毛鈎工房さん
コメントありがとうございます。
知らないと怖いものってありますよね。渓流や山間の流れのそばはマムシが好んで生息する場所なので、これからも多分、出会うことがあると思います。気がつかず接触してもゴム長などを履いていれば通常牙は通りません。安全で楽しい釣行をお祈りしております!

2009.09.30(Wed) 17:25 | URL | EDIT

tak #79D/WHSg

9. Re:タンパク源・・・


>おこじょさん
この写真を撮ったときは「お見合い」状態で、「こっち向いてー」とか言いながら撮影してました(笑)。

千葉市内は生息数が少ないっぽいので、多数生息する地方で食べてみたいです(・∀・)

2009.09.30(Wed) 17:27 | URL | EDIT

tak #79D/WHSg

10. Re:ナマのマムシ


>青菊さん
マムシはだんだん人の営みから離れた生き物になって、かえってイメージだけが一人歩きしているような気がします。おっしゃる通り、共存共栄の道を歩むことができたら素晴らしいと思います。私ももっともっと勉強いたします。

2009.09.30(Wed) 17:29 | URL | EDIT

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プロフィール

大島健夫

Author:大島健夫
1974年11月20日生まれ。千葉生まれ千葉育ち。美浜区在住。

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